小麦と原油、戦争後に価格がどう動くのか

2022.6.8
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From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

物価がぐんぐん上がってきていますね。

今回は、身近な商品(小麦と原油)をサンプルに、
簡単な分析をして、戦争が収まった際の
価格下落の予想をしてみます。

コロナウィルスが確認されて、
騒がれ始めたのは2020年1月です。

まずはそれ以降の、
小麦国際価格の推移を見てみましょう。

小麦は、コロナ前は550ドル前後で
安定していましたが、
2020年の後半から緩やかに上昇を始め、

2021年初には600ドルを越え、
2021年末には800ドルに達しました。

2022年の2月後半から更に上昇を始め、
3月7日に高値1400ドルを超え、
その後やや下げて高値安定し、今に至っています。

ちなみに、ここで使った小麦価格は
シカゴの商品取引所で取引されていて、
そこでの価格が世界で標準にされます。

取引単位は5000ブッシェルで、
140トンに相当する重さです。
先渡し取引での取引通貨は当然USドルです。

先渡しというのは、先物取引の一つで、
先物取引と異なるのは、
反対売買で差金決済ができない事です。
小麦の現物の引き取り(現引き)を前提とする取引ですね。

次に原油を見てみましょう。

原油は、北米と欧州の市場がありますが、
今回は欧州で取引される英国(とノルウェー)原油の
北海ブレント価格を見てみましょう。

2020年は、コロナ過に入った時期には、
世界経済が止まり原油が暴落しました。
4月21日には20ドルを割っています。

その後は経済の回復に従い、一本調子に上昇を続け、
90ドルで高値安定していましたが
戦争勃発後100ドルを超えて上昇、

その後120ドルを超えた後、やや下げたものの、
再び120ドルに乗せ、今も高値安定しています。

ちなみに北海ブレントは、ロンドンにある
ICEフューチャーズヨーロッパで
先物取引されています。

この油田は洋上にあるため海運に適しており、
欧州の標準にされており、
中東での価格もここでの価格が基準にされます。

1000バレル(159kL)が取引単位で、
ポンドではなくUSドル単位で先物取引されます。
1バレルは、お酒の樽の大きさからきています。

この2つの価格を見てわかるのは、
価格が上昇を始めた時期が共通している事です。
コロナ禍に入って数か月経過した2020年の後半です。

この傾向を見るために、
2つの価格を2020年初日を100として指数化して、
同じグラフで見てみましょう。

2つを重ねるこのグラフから、
2つの商品の値動きの傾向の類似性、
あるいは異質性が明らかになります。

共通点は、一度2020年の前半は価格が下落し、
その後直線的に上がってきたことです。

上昇率(直線の傾き)もほぼ同じで、
エイヤで計算すると
年間40%という恐ろしいものです。

2022年3月初旬に
ピークをつけたのも共通しています。
この急激に上がった理由は、
ロシアとウクライナの戦争ですね。

一方、両者が異なるのは、
小麦は大きな下げが無いのに、
原油だけ2020年4月に急に下げました。

これは、米国で取引される原油先物価格が、
決済できない事がある特殊な仕組みのせいで
流動性が瞬間無くなり、

2020年4月20日にマイナスをつけたために、
世界中の原油が暴落したためです。

さて、2つの価格推移を元に、
それぞれ傾向線として、
直線を描いてみました。

この傾向線は、
ウクライナ戦争後の上昇を
無視して引いたものです。

傾向線から読み取れる2022年6月初旬の価格は、
小麦(青色)は170%、
原油(オレンジ色)は140%程度です。

この数字は、
コロナによる価格上昇分を示すと
考えてよいでしょう。

元の価格を100%としているので、
上昇率は、70%(小麦)、40%(原油)ですね。

実勢価格は、小麦 186%、原油184%なので、
傾向線より、それぞれ、
16%(小麦)、44%(原油)割高です。

この割高な部分が、
戦争によるプレミアムと解釈できます。

つまり、同じような高みにいる2つの商品ですが、
上昇の具合から、上がった理由と寄与分が異なる。

表にまとめるとこうなります。

これを元に、仮に戦争が終わると、
いくらになるか推測できます。

戦争分の寄与は無くなるので
実勢価格から戦争寄与分を計算します。

小麦16ポイント下落
(今の実勢価格 186に対し 8.5%下落)
原油44ポイント下落
(今の実勢価格 184に対し 24%下落)

この説によると、
戦争が終わると原油はずいぶん下がります。

でも案外、小麦の下落は
それほどでもないことがわかります。

奥村尚

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