From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
物価がぐんぐん上がってきていますね。
今回は、身近な商品(小麦と原油)をサンプルに、
簡単な分析をして、戦争が収まった際の
価格下落の予想をしてみます。
コロナウィルスが確認されて、
騒がれ始めたのは2020年1月です。
まずはそれ以降の、
小麦国際価格の推移を見てみましょう。
小麦は、コロナ前は550ドル前後で
安定していましたが、
2020年の後半から緩やかに上昇を始め、
2021年初には600ドルを越え、
2021年末には800ドルに達しました。
2022年の2月後半から更に上昇を始め、
3月7日に高値1400ドルを超え、
その後やや下げて高値安定し、今に至っています。
ちなみに、ここで使った小麦価格は
シカゴの商品取引所で取引されていて、
そこでの価格が世界で標準にされます。
取引単位は5000ブッシェルで、
140トンに相当する重さです。
先渡し取引での取引通貨は当然USドルです。
先渡しというのは、先物取引の一つで、
先物取引と異なるのは、
反対売買で差金決済ができない事です。
小麦の現物の引き取り(現引き)を前提とする取引ですね。
次に原油を見てみましょう。
原油は、北米と欧州の市場がありますが、
今回は欧州で取引される英国(とノルウェー)原油の
北海ブレント価格を見てみましょう。
2020年は、コロナ過に入った時期には、
世界経済が止まり原油が暴落しました。
4月21日には20ドルを割っています。
その後は経済の回復に従い、一本調子に上昇を続け、
90ドルで高値安定していましたが
戦争勃発後100ドルを超えて上昇、
その後120ドルを超えた後、やや下げたものの、
再び120ドルに乗せ、今も高値安定しています。
ちなみに北海ブレントは、ロンドンにある
ICEフューチャーズヨーロッパで
先物取引されています。
この油田は洋上にあるため海運に適しており、
欧州の標準にされており、
中東での価格もここでの価格が基準にされます。
1000バレル(159kL)が取引単位で、
ポンドではなくUSドル単位で先物取引されます。
1バレルは、お酒の樽の大きさからきています。
この2つの価格を見てわかるのは、
価格が上昇を始めた時期が共通している事です。
コロナ禍に入って数か月経過した2020年の後半です。
この傾向を見るために、
2つの価格を2020年初日を100として指数化して、
同じグラフで見てみましょう。
2つを重ねるこのグラフから、
2つの商品の値動きの傾向の類似性、
あるいは異質性が明らかになります。
共通点は、一度2020年の前半は価格が下落し、
その後直線的に上がってきたことです。
上昇率(直線の傾き)もほぼ同じで、
エイヤで計算すると
年間40%という恐ろしいものです。
2022年3月初旬に
ピークをつけたのも共通しています。
この急激に上がった理由は、
ロシアとウクライナの戦争ですね。
一方、両者が異なるのは、
小麦は大きな下げが無いのに、
原油だけ2020年4月に急に下げました。
これは、米国で取引される原油先物価格が、
決済できない事がある特殊な仕組みのせいで
流動性が瞬間無くなり、
2020年4月20日にマイナスをつけたために、
世界中の原油が暴落したためです。
さて、2つの価格推移を元に、
それぞれ傾向線として、
直線を描いてみました。
この傾向線は、
ウクライナ戦争後の上昇を
無視して引いたものです。
傾向線から読み取れる2022年6月初旬の価格は、
小麦(青色)は170%、
原油(オレンジ色)は140%程度です。
この数字は、
コロナによる価格上昇分を示すと
考えてよいでしょう。
元の価格を100%としているので、
上昇率は、70%(小麦)、40%(原油)ですね。
実勢価格は、小麦 186%、原油184%なので、
傾向線より、それぞれ、
16%(小麦)、44%(原油)割高です。
この割高な部分が、
戦争によるプレミアムと解釈できます。
つまり、同じような高みにいる2つの商品ですが、
上昇の具合から、上がった理由と寄与分が異なる。
表にまとめるとこうなります。
これを元に、仮に戦争が終わると、
いくらになるか推測できます。
戦争分の寄与は無くなるので
実勢価格から戦争寄与分を計算します。
小麦16ポイント下落
(今の実勢価格 186に対し 8.5%下落)
原油44ポイント下落
(今の実勢価格 184に対し 24%下落)
この説によると、
戦争が終わると原油はずいぶん下がります。
でも案外、小麦の下落は
それほどでもないことがわかります。
奥村尚
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・ジャパンインベストメントスクール講師
・マーケット アナリスト
・マーケットの魔術師
20兆円もの運用資産をもつ米国大手ヘッジファンド株式投資部門スーパーバイザー、自身も日本でヘッジファンドを主宰。日本証券アナリスト協会会員。
1987年、都立大学大学院工学研究科修了(テーマは人工知能)。日興証券入社。投資工学研究所にて、数々の数理モデル開発に携わる。スタンフォード大学教授ウィリアム・F・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)なども手掛ける。
2000年 東証マザーズ上場第一号のインターネット総研で金融事業を統括。
2002年 イスラエル天才科学者とベンチャー企業設立、人工知能技術を商用化し空港に導入。
2004年以降は、金融業界とIoT業界の交点で活躍。最先端の人工知能とアナリストの相場適応力を融合させた投資モデルMRAを完成し、内外の機関投資家に提供する。この投資手法は、最低25%/年以上の収益を「MRAを使う誰にでも」もらたしている(一度も元本割れなし)。
2015年 個人投資家へMRA情報提供開始、さらに投資塾を通してお金の知識を広め、ゆたかな生活の創造に貢献している。
趣味は、オーディオの機械いじり。ワインやウィスキーをたしなむこと。スポーツも好きでスキー、スケートは自称特級(そんなものはない)、エアロビック競技を10年ほどやっている(NAC マスター男子シングル 9連覇中、2014-2016日本選手権千葉県代表)。ただし、「かなずち」であり、球技も苦手である。