残念ながら賃金上昇は錯覚です

2023.10.18
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From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

日本の賃金について、
厚生労働省が、毎月調査している
実質賃金指数というものがあります。

実質賃金というのは、名目賃金という、
賃金の絶対額(円)に対して、

物価上昇分を考慮して
その部分を割り引く計算を行います。

2020年1年間における、
月平均を100として、

毎月どれくらい
上昇(あるいは下落)したかを、
前年同月比で示します。

前月比ではなく、
前年同月比にするのは
なぜかというと、

四季とか、それぞれの月では、
特殊な事情で前月比が
大きく変化することが多いので、

同じ月同士で
前年と比べる考え方です。

たとえば、
11月と12月をくらべると、

年末商戦がある12月は
特殊要因がいっぱいあって
11月とは単純に比べられません。

いまご紹介している、
実質賃金指数というのは、
国家経済の一部で

マクロ経済の一つの統計になりますが、
マクロ経済ではよく使われる考え方です。

英語では、
YoY(Year on Year)などと
略されます。

これに対して、
前月比(MoM ,Month on Month)なども
時々使われます。

CPIなども、
通常はYoYで示されますが、

時にはMoMでも示されることがあり、
きちんとしたニュースや記事では、
かならず何の数字であるか示されます。

時々、ニュースでCPIをMoMで示し、
何も付記されていないデータを
しれっと伝えることがあって、

びっくりしますけど、
これは意図した騙しかもしれません。

話がそれちゃいましたね。

もとに戻して、
実質賃金指数の推移を見てみましょう。

 

 

これをみると、
ずっとマイナスが続いていますね

2023年8月の実質賃金が
最新の値(速報値)ですが、
-2.5%(YoY)です。

ここでは、14カ月分しか
発表されていませんが、

過去のデータを並べると、
じつに17カ月連続で低下しています。

年平均でみて、もう少し長期でみても、
この情けない数字は変わりません。

2013年からみると、
前年比マイナスが目立ちます。
(2023年は、1-8月の平均をとっています)

 

 

この中でプラス成長をしたのは、
2021年が最近ですが、

この前年である2020年は、
パンデミックのおかげで、
経済がボロボロ(賃金も-1.2%)だったので、

その翌年である2021年は
多少プラスになって当たり前であって、

そのプラスが足りない点で
情けなさがあります。

プラス成長はこの10年間、
わずか3回で、その3回の成長率も、
平均0.5%です

マイナス成長はこの10年間、
実に7回あって、その7回の成長率は
平均-0.9%です

これはプラス成長は、
回数が少ない(たった3割)うえ、
成長率も少ない。

マイナス成長は
数が多い(なんと7割)うえ、
マイナス成長率も大きい。
(プラスの時の倍くらい下がっている)

トレードに例えると、こんな感じです。
勝率は3割、1回の儲けは少ない
敗北率は7割、1回のロスはでかい

ということに相当するでしょう。

こんなことを続けていては、
元本はどんどん目減りしますね。

いまの日本の賃金は、
そんな感じになっているわけです。

2023年は、春に大きく
賃上げされていますが、
統計上、これは名目賃金が上がっているだけで、

物価が上昇している分、
実質賃金は下がっていることになります。

賃金上がっているように思いがちですが、
数字を読むとそれは
思い込みであることがわかりますね。

奥村尚

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