踏み絵からみる世界観

2020.7.22
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From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

米国は、ハーウェイなど中国の通信会社を
エンティティリストに指定し、そうした会社は
国内市場から締め出そうとしています。

対象の会社と付き合う会社も、
仲間なので同罪として締め出そうとしています。

また、ファイブアイズと呼ばれる
アングロサクソンの同盟国間で、
共同作戦を展開しようとしています。
(5eyesは、米国、イギリス、カナダ、
オーストラリア、ニュージーランドによる
別名UKUSA[ウクサ]協定)。

他国にも、

・米国か
・中国か

選ぶことを求めているのですね。

これは踏み絵です。

世界のスマホシェアは、
サムスン22%、Apple14%、ファーウェイ18%です。
(IDC Quarterly Mobile Tracker2019))

また、通信基地局のシェアは、
ファーウェイ31%、エリクソン(スウェーデン)27%、
ノキア22%、ZTE11%、サムスン5%
(source:IHS Markit)です。

スマホは、サムスン、アップル、ファーウェイの
3社だけで、世界の54%。日欧の企業はこの中にいません。

基地局は、上位4社だけで91%です。

うち2社が中国、2社は北欧です。
日米企業はこの中にいません。

日本は、どこにも入っていません。

1990年代の家電大国は、20世紀で滅んでしまいました。

とりわけ、ファーウェイはスマホ世界二位、
基地局世界一位という圧倒的なシェアを誇っています。

2019年5月16日、米商務省はファーウェイと
その関連会社をエンティティリストの登録しました。

このリストは、米国にとって貿易を行うには
好ましくない相手です。

要するにテロリストの仲間とみなされ、
つまりファーウェイと付き合っている会社は
米国から排除される可能性があります。

米国政府が危惧しているのは
主にファーウェイの基地局ですが、

携帯電話そのものも、米国の制裁対象になっており、
GoogleはすでにAndroidサービスに接続する機能を
ハーウェイに対して停止しており、要するに
Google Playに接続できなくなっています。

代わりに、ハーウェイ独自のアプリサイトを
ハーウェイは自社で運営し、
ユーザーはそこからダウンロードさせるようになっており、
その開発運営コストを負担しています。

莫大な負担です。

昔、マイクロソフトwindowsを販売した時、
日本のNECだけは自社の9801の独自性にこだわり、
しばらくはNEC専用のwindowsをマイクロソフトの中で
開発しユーザに提供していましたが、
他のwindowsと互換性がなく滅んでしまいました。

結果、NECはパソコンの地位を失います。

行きつく先は、そこになるでしょう。

私も、ハーウェイのモバイル端末を使っていたのですが、
たとえば、日本でもマイナンバーカードを携帯に読み込ませ、
サイトに登録する行政サービスがありますが、
ハーウェイは結局こうした用途には使えません。

ハーウェイもICカード自体を読む機能はありますが、
実際には使えないのですね。

2020年5月15日、米政府は、
米国外で作られた半導体でも
米国製の半導体製造装置を使っている場合、

ファーウェイとその子会社入シリコンへの
納品を禁止すると発表。

ファーウェイは、心臓部となる半導体、
たとえばマイクロプロセッサは大半を
子会社のハイシリコンで設計し、
製造は台湾のTSMCに依存しています。

TSMCは米国の最新の製造装置を使っているため、
規制対象になります。

TSMCの工場は中国にもありますが、
最近はアメリカにも工場を持っているので
直接・間接に、米国はTSMCに中国に売るな
という圧力をかけているようです。

台湾と中国は政府間では仲が悪いのですが、
ビジネス的には良好な関係です。

TSMCは、自社ブランドの設計、製造をせずに
客の製造を受託する、いわゆる
「ファウンドリービジネス」の先駆者です。

IR情報では、ファウンドリー生産の
世界市場の51.5%のシェアをもっている
とのことでした。

しかし、その売上の15%はファーウェイであり、
これがなくなると、TSMCもかなりの痛手になるでしょう。

中国にとって、TSMCの代替先は韓国のサムソンです。

米国を敵に回してまで、
ファーウェイに納品できるかどうか、

米国の規制にサムスンも引っかかる可能性があるので、
リスクがある取引となるでしょう。

2020年6月10日、韓国LGは液晶パネル用の
偏光板事業を中国企業に売却を発表しました。

もともと、先進パネルは有機ELにシフトしており
液晶パネルは儲からないので、
ちょうどよい相手にちょうど良い時期に
高値(1200億円)で売却した格好です。

これは、今後のヒントになるのではないでしょうか。

つまり、ハーウェイは、米国製の半導体装置を
使っている会社(たとえばSS社)の一部を買収し、
そこを使って半導体を製造する。

SS社は、(必要であれば)再び半導体製造装置を購入し、
もとの事業を再生する。

これが米国にバレなければ上手くいきますが、
バレたらSS社も同罪として米国から締め出されますから
ハイリスクです。

たぶんできないでしょう。

7月19日、英国政府はファーウェイを排除する
方針を既に決めていますが、日本政府に対し
5Gのネットワークづくりで協力を求め、
NECや富士通が代替調達先になる可能性に言及しました。

奇しくもNECがここにも名を連ねたのは興味深いです。

日本は、20世紀に失った、輝かしい
エレクトロニクス産業の過去を、
(少しは)とりもどせる良いチャンスに
巡り合えたかもしれません。

奥村尚

追伸:
銘柄選び・売買判断に必要なスキルとは
突き詰めていくとかなりシンプルになります。

その考え方を今無料公開中なのですが、
まもなくページが閉じるそうなので
早めにご覧ください。

http://japan-i-school.jp/jim/ok202007_op/

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