From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
米国は、ハーウェイなど中国の通信会社を
エンティティリストに指定し、そうした会社は
国内市場から締め出そうとしています。
対象の会社と付き合う会社も、
仲間なので同罪として締め出そうとしています。
また、ファイブアイズと呼ばれる
アングロサクソンの同盟国間で、
共同作戦を展開しようとしています。
(5eyesは、米国、イギリス、カナダ、
オーストラリア、ニュージーランドによる
別名UKUSA[ウクサ]協定)。
他国にも、
・米国か
・中国か
選ぶことを求めているのですね。
これは踏み絵です。
世界のスマホシェアは、
サムスン22%、Apple14%、ファーウェイ18%です。
(IDC Quarterly Mobile Tracker2019))
また、通信基地局のシェアは、
ファーウェイ31%、エリクソン(スウェーデン)27%、
ノキア22%、ZTE11%、サムスン5%
(source:IHS Markit)です。
スマホは、サムスン、アップル、ファーウェイの
3社だけで、世界の54%。日欧の企業はこの中にいません。
基地局は、上位4社だけで91%です。
うち2社が中国、2社は北欧です。
日米企業はこの中にいません。
日本は、どこにも入っていません。
1990年代の家電大国は、20世紀で滅んでしまいました。
とりわけ、ファーウェイはスマホ世界二位、
基地局世界一位という圧倒的なシェアを誇っています。
2019年5月16日、米商務省はファーウェイと
その関連会社をエンティティリストの登録しました。
このリストは、米国にとって貿易を行うには
好ましくない相手です。
要するにテロリストの仲間とみなされ、
つまりファーウェイと付き合っている会社は
米国から排除される可能性があります。
米国政府が危惧しているのは
主にファーウェイの基地局ですが、
携帯電話そのものも、米国の制裁対象になっており、
GoogleはすでにAndroidサービスに接続する機能を
ハーウェイに対して停止しており、要するに
Google Playに接続できなくなっています。
代わりに、ハーウェイ独自のアプリサイトを
ハーウェイは自社で運営し、
ユーザーはそこからダウンロードさせるようになっており、
その開発運営コストを負担しています。
莫大な負担です。
昔、マイクロソフトwindowsを販売した時、
日本のNECだけは自社の9801の独自性にこだわり、
しばらくはNEC専用のwindowsをマイクロソフトの中で
開発しユーザに提供していましたが、
他のwindowsと互換性がなく滅んでしまいました。
結果、NECはパソコンの地位を失います。
行きつく先は、そこになるでしょう。
私も、ハーウェイのモバイル端末を使っていたのですが、
たとえば、日本でもマイナンバーカードを携帯に読み込ませ、
サイトに登録する行政サービスがありますが、
ハーウェイは結局こうした用途には使えません。
ハーウェイもICカード自体を読む機能はありますが、
実際には使えないのですね。
2020年5月15日、米政府は、
米国外で作られた半導体でも
米国製の半導体製造装置を使っている場合、
ファーウェイとその子会社入シリコンへの
納品を禁止すると発表。
ファーウェイは、心臓部となる半導体、
たとえばマイクロプロセッサは大半を
子会社のハイシリコンで設計し、
製造は台湾のTSMCに依存しています。
TSMCは米国の最新の製造装置を使っているため、
規制対象になります。
TSMCの工場は中国にもありますが、
最近はアメリカにも工場を持っているので
直接・間接に、米国はTSMCに中国に売るな
という圧力をかけているようです。
台湾と中国は政府間では仲が悪いのですが、
ビジネス的には良好な関係です。
TSMCは、自社ブランドの設計、製造をせずに
客の製造を受託する、いわゆる
「ファウンドリービジネス」の先駆者です。
IR情報では、ファウンドリー生産の
世界市場の51.5%のシェアをもっている
とのことでした。
しかし、その売上の15%はファーウェイであり、
これがなくなると、TSMCもかなりの痛手になるでしょう。
中国にとって、TSMCの代替先は韓国のサムソンです。
米国を敵に回してまで、
ファーウェイに納品できるかどうか、
米国の規制にサムスンも引っかかる可能性があるので、
リスクがある取引となるでしょう。
2020年6月10日、韓国LGは液晶パネル用の
偏光板事業を中国企業に売却を発表しました。
もともと、先進パネルは有機ELにシフトしており
液晶パネルは儲からないので、
ちょうどよい相手にちょうど良い時期に
高値(1200億円)で売却した格好です。
これは、今後のヒントになるのではないでしょうか。
つまり、ハーウェイは、米国製の半導体装置を
使っている会社(たとえばSS社)の一部を買収し、
そこを使って半導体を製造する。
SS社は、(必要であれば)再び半導体製造装置を購入し、
もとの事業を再生する。
これが米国にバレなければ上手くいきますが、
バレたらSS社も同罪として米国から締め出されますから
ハイリスクです。
たぶんできないでしょう。
、
7月19日、英国政府はファーウェイを排除する
方針を既に決めていますが、日本政府に対し
5Gのネットワークづくりで協力を求め、
NECや富士通が代替調達先になる可能性に言及しました。
奇しくもNECがここにも名を連ねたのは興味深いです。
日本は、20世紀に失った、輝かしい
エレクトロニクス産業の過去を、
(少しは)とりもどせる良いチャンスに
巡り合えたかもしれません。
奥村尚
追伸:
銘柄選び・売買判断に必要なスキルとは
突き詰めていくとかなりシンプルになります。
その考え方を今無料公開中なのですが、
まもなくページが閉じるそうなので
早めにご覧ください。
↓
http://japan-i-school.jp/jim/ok202007_op/
・ジャパンインベストメントスクール講師
・マーケット アナリスト
・マーケットの魔術師
20兆円もの運用資産をもつ米国大手ヘッジファンド株式投資部門スーパーバイザー、自身も日本でヘッジファンドを主宰。日本証券アナリスト協会会員。
1987年、都立大学大学院工学研究科修了(テーマは人工知能)。日興証券入社。投資工学研究所にて、数々の数理モデル開発に携わる。スタンフォード大学教授ウィリアム・F・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)なども手掛ける。
2000年 東証マザーズ上場第一号のインターネット総研で金融事業を統括。
2002年 イスラエル天才科学者とベンチャー企業設立、人工知能技術を商用化し空港に導入。
2004年以降は、金融業界とIoT業界の交点で活躍。最先端の人工知能とアナリストの相場適応力を融合させた投資モデルMRAを完成し、内外の機関投資家に提供する。この投資手法は、最低25%/年以上の収益を「MRAを使う誰にでも」もらたしている(一度も元本割れなし)。
2015年 個人投資家へMRA情報提供開始、さらに投資塾を通してお金の知識を広め、ゆたかな生活の創造に貢献している。
趣味は、オーディオの機械いじり。ワインやウィスキーをたしなむこと。スポーツも好きでスキー、スケートは自称特級(そんなものはない)、エアロビック競技を10年ほどやっている(NAC マスター男子シングル 9連覇中、2014-2016日本選手権千葉県代表)。ただし、「かなずち」であり、球技も苦手である。