From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
商品相場に関して、
少し前に小麦を取り上げました。
今回は、原油、およびエネルギーの話をします。
まず、過去1年間の原油価格をみておきましょう。
米国の原油価格はNYのマーカンタイルという取引所で
WTIという商品名で先物取引されています。
WTIは、「West Texas Intermediate」の略で、
テキサス州で産出される原油を指します。
原油の基準価格として、北米で指標とされる原油価格です。
経済ニュースで原油価格というと、
多くの場合、欧州の北海ブレントか、WTIの事を指します。
2022年に入ってから、ジワジワと上昇を続けた原油価格ですが、
一気に急上昇したのが今年の2月末でした。
急上昇した理由は言わずもがな、ロシアとウクライナの戦争です。
米英がロシア産原油の禁輸を決定したことで、130ドル台に上昇しました。
しかし、いくつかの原油が下がる事由があり、
ここ3週間程度は落ち着いてきました。
いくつかの事由とは、
1、 ウクライナ戦争の(少なくとも)拡大を防げる様相が見えてきたこと
2、 OPECの増産の期待と、日欧米の国家備蓄の放出という需給の改善期待
3、 中国のコロナ拡大感染懸念による需要減
でしょう。
特に、1に関しては、世界が戦争状態に慣れてきたこと、
という理由が大きいように思います。
2では、(OPECではなく)OPEC+として結束を重視し、
地政学問題による需給現象には対応しない方針を表明したことで、
増産期待は薄いのですが、価格が上昇することもなく、
今に至っています.
OPEC+の主力メンバーはロシアですし、
高い価格を維持しておきたいでしょうから。
ちなみに、
原油と天然ガスは、独立した商品ではなく、
地球の自然現象から同時に生成されるものです。
どちらも、大昔の生物の死骸が堆積して
それを微生物が分解する作用で、数百万年かかって有機化合物に変化し、
さらにその化合物が石油やガスに変化するものです。
よく、石油採掘の映像では、細長ーいパイプを天に伸ばして、
火を燃やしていますね。
あれ、石油採掘の際の地層の上層には必ず天然ガス層があって、
天然ガスが充満しているからです。
天然ガスはメタンガスであり有毒でそのまま放出すると危険です。
そこで、長いパイプを使って高いパイプで上空に導き燃やしています。
現在の技術を使えば液化天然ガスに変化させられるのですが、
量が多いとは限らないので、
この古典的な方法が安価に処分できることもあって、
今でも燃やしてしまうのが主流です。
この施設は「フレアスタック(flare stack)」といいます。
ところで、過去、原油が一番高く取引されたのは、2008年7月です。
この時の動きも、2021年までの長期でみておきましょう。
2008年の価格上昇は、
なぜここまで上がったのか、説明できる理由がありません。
中東の地政学リスクの増大は、昔も今も、そしてこの当時も同じです。
OPECの生産能力低下による漠然とした不安は、今の方が上です。
おそらく、そうした需給ではなく、原油を原油としてではなく、
金融商品としてデリバティブ金融取引化した仕組みによる、
異常なレバレッジ取引による理由があったのだと思います。
そんな中でリーマンショックが起こりました。
原油が最高値を付けたのは2008年7月ですが、
その2か月後、リーマンブラザーズの経営破綻があって、
世界景気は一気に収縮。
石油価格は2008年末には実に1/3以下、30ドル台になりました。
この2008年末にはOPECは総会で大幅な減産を実施し、
原油は80ドルを回復しています。
もう少し歴史をさかのぼりましょうか。
オイルショックがあったのは1973年10月ですから、
今から約50年前です。
当時、
「世界の石油はあと30年で枯渇する」
とニュースでも学校教育でも言い続けられました。
日本の石油開発会社11社で構成される
石油連盟という組織がありますが、
そこで発表されている広報資料(2020年)では、
世界であと49年採れるとしています。
油田の発見技術、採掘技術などが上がって、
いろいろな場所で油田が発見され開発されたことが大きな理由です。
同じく石油連盟の広報資料によると、
日本では、石油はほぼ100%輸入に頼っていて、
ガソリンや燃料、発電などのエネルギーとして使われるのは、
全体の80%です 。
残りの20%は、ゴムやプラスチックなどの
製品原材料として使われています。
発電に関しては、
実に76.3%(資源エネルギー庁2020年集計値)が
石油やガス、石炭という化石燃料を燃やす方式です。
話は変わりますが、
関東では、今年3月に電力が不足する恐れがあった事を
記憶している方も多いと思います。
同じことが、7月にも起こることが懸念されています
(東電パワーグリッド、資源エネルギー庁など)。
停電の恐れあり、といったところです。
石油価格が高止まりする場合、泣きっ面に蜂で、
電力価格を市場連動型にしている人は、
1kwhあたり200円くらいになる可能性があります。
いやな話ではありますが、予想できる危機である限り、
回避することはできるものです。
奥村尚
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・ジャパンインベストメントスクール講師
・マーケット アナリスト
・マーケットの魔術師
20兆円もの運用資産をもつ米国大手ヘッジファンド株式投資部門スーパーバイザー、自身も日本でヘッジファンドを主宰。日本証券アナリスト協会会員。
1987年、都立大学大学院工学研究科修了(テーマは人工知能)。日興証券入社。投資工学研究所にて、数々の数理モデル開発に携わる。スタンフォード大学教授ウィリアム・F・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)なども手掛ける。
2000年 東証マザーズ上場第一号のインターネット総研で金融事業を統括。
2002年 イスラエル天才科学者とベンチャー企業設立、人工知能技術を商用化し空港に導入。
2004年以降は、金融業界とIoT業界の交点で活躍。最先端の人工知能とアナリストの相場適応力を融合させた投資モデルMRAを完成し、内外の機関投資家に提供する。この投資手法は、最低25%/年以上の収益を「MRAを使う誰にでも」もらたしている(一度も元本割れなし)。
2015年 個人投資家へMRA情報提供開始、さらに投資塾を通してお金の知識を広め、ゆたかな生活の創造に貢献している。
趣味は、オーディオの機械いじり。ワインやウィスキーをたしなむこと。スポーツも好きでスキー、スケートは自称特級(そんなものはない)、エアロビック競技を10年ほどやっている(NAC マスター男子シングル 9連覇中、2014-2016日本選手権千葉県代表)。ただし、「かなずち」であり、球技も苦手である。