From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
今回は、
超長期でチャートを観る方法をお伝えします。
普通にFXや株式をトレードする時、
そのポジションを取る(保有期間)はFXだと数日以内、
せいぜい1週間程度でしょう。
株式だともう少し長くなると思いますが、
多分1か月から半年程度でしょう。
金融においては、一般に1年未満を短期、
1年以上を長期と定義していますが、
超長期となると、10年以上を指します。
つまり、ポジションを取る期間は短期です。
チャートを見るときは、
投資する期間を基準にするのが定石ですね。
短期というトレード期間に対しては、
チャートを描画する過去の期間も短期にしておく、
というのが基本となります。
つまり、明日1日を読みたいなら
1日から2日前からの動きを見ておけばよく、
1週間くらいの保有を前提にチャートを見る時は、
せいぜいその倍の期間、
例えば2週間程度前からの推移を見れば十分です。
1週間先の投資期間に対して、
1年も前からのチャートを見たところで、
普通はあまり意味を持たないのです。
では、10年以上も前からのチャートを眺めて、
いったい、何がわかるのでしょうか?
実際に眺めながら、何がわかるのか、
確認していきましょう。
せっかくなので、10年どころではなく、
もっとずっと昔からのデータを使って
チャートを作ってみました。
NYダウの、1915年以降、2022年6月27日までの
実に107年間の推移です。
ニューヨーク証券取引所は、
ブローカーたちが始めた1872年を起源としています。
今の建物がウォール街にできたのが1903年でした。
NYdowが計算されたのが1896年5月でした。
本当はその時代からチャートを作ろうとしましたが、
信頼できるデータが入手できなかったので、
1915年からとしました。
日本の戦後の相場が始まったのは1949年5月ですので、
東証の最長期間が2022年までの73年ですから、
この107年というのは、およそ考えられる、
最大の超長期です。
このチャートを見る限り、
1915年から1990年代前半まで、
目立った上げ方はしていないように見えます。
この頃まで、米国は高金利で、
投資と言えば債券の時代だったのです。
そして、1995年くらいから、
一気に加速的に株価が上がってきた。
債券から株式に、
投資対象の資産が移ってきたのです。
逆に、下がっていた時期
というのはよくわかります。
まず、1929年からの数年間の下落①があります。
これは、歴史で必ず習う、世界恐慌です。
次の下落が、
1966年から1970年代後半までの
長い期間の下落②です。
17年間の長い間に渡る、
不調な時期でした。
ベトナム戦争長期化、オイルショック。
それを理由とするインフレなどで
景気も悪い状況でした。
これほど長期で見ると
小さなディップなので見過ごしかねないのですが、
1987年10月にブラックマンデーが起こりました③。
一日の下落率が-22.6%で、
この長期の中でも下落率は
ぶっちぎりでトップです。
下げた理由は、
後解釈でいろいろな説があるのですが、
当時の状況としては、原因不明、
といったところです。
日々の相場の上げ下げは必ず起こるものです。
それがたまたま、偶発的に大きくなったもの、
という理解が最も正解に近いのだろうと私は考えています。
その後、何事もなかったかのように、
2年もかからずに戻りました。
この時の教訓で、
1日の株式の上下の値幅が取引所によって
制限されるようになり、
一日単位では、
この時のような大きな下落は
理論的に起こらなくなっています。
2000円から2004年までの下落は、
記憶が明確にある方も多い事でしょう④。
1999年から起こってきた、
インターネットバブルに乗って
ITベンチャー企業があっという間に
時価総額を増やしました。
ニューエコノミーともてはやされましたが、
そのバブルが崩壊したのです。
これを教訓に、企業と、会計監査する側(会計事務所)、
株式評価する側(証券会社)との関係が
厳しく見直されるようになります。
2008年から2010年までの下落は、
更に明確な記憶をお持ちの方が多いでしょう。
リーマンショックです。
2007年に米国で不動産バブルが起き、
低所得者向け住宅ローンは大賑わいでした。
そうした債権を、他の資産とごちゃまぜにして、
証券会社は投資家にバスケットとして販売したのです。
言ってみれば福袋ですから、
はっきり言って何が入っているかわからず買う。
しかし、地価が下落し始めると担保価値が下がるので、
借り手が返済できなくなり、
結局債権は紙くずになります。
特にこの商品を多く扱った
リーマンブラザーズが倒産し、
保険大手AIGも倒産危機に陥り、
株式市場はそれを嫌悪して暴落しました。
この教訓で、
金融機関に対してレバレッジ投資の取り扱いや
オフバランスシート事業が規制されました。
このように、長期の相場を見ることで、
相場の流れ、過去起きたことを
改めて見直し学習することができます。
賢者は歴史から学ぶ。
今後起きるであろうことを、
実際に起こった過去から学ぶ、ということが、
超長期のチャートから導かれるのですね。
過去を知ると、
今後の投資判断に役立つのです。
時間のある時に、
色々なことを調べながら超長期のチャートを見ると、
かなり良い相場の研究になるでしょう。
奥村尚
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・ジャパンインベストメントスクール講師
・マーケット アナリスト
・マーケットの魔術師
20兆円もの運用資産をもつ米国大手ヘッジファンド株式投資部門スーパーバイザー、自身も日本でヘッジファンドを主宰。日本証券アナリスト協会会員。
1987年、都立大学大学院工学研究科修了(テーマは人工知能)。日興証券入社。投資工学研究所にて、数々の数理モデル開発に携わる。スタンフォード大学教授ウィリアム・F・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)なども手掛ける。
2000年 東証マザーズ上場第一号のインターネット総研で金融事業を統括。
2002年 イスラエル天才科学者とベンチャー企業設立、人工知能技術を商用化し空港に導入。
2004年以降は、金融業界とIoT業界の交点で活躍。最先端の人工知能とアナリストの相場適応力を融合させた投資モデルMRAを完成し、内外の機関投資家に提供する。この投資手法は、最低25%/年以上の収益を「MRAを使う誰にでも」もらたしている(一度も元本割れなし)。
2015年 個人投資家へMRA情報提供開始、さらに投資塾を通してお金の知識を広め、ゆたかな生活の創造に貢献している。
趣味は、オーディオの機械いじり。ワインやウィスキーをたしなむこと。スポーツも好きでスキー、スケートは自称特級(そんなものはない)、エアロビック競技を10年ほどやっている(NAC マスター男子シングル 9連覇中、2014-2016日本選手権千葉県代表)。ただし、「かなずち」であり、球技も苦手である。